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サブジェクト・トゥする 「日本のいちばん長い日」

2011.08.15 Mon
 だからなんだ、と突っ込まれるだろうが現在わたしは、昭和二十年当時の昭和天皇の御年齢とおなじ歳である。今のおれと同じ歳で、陛下はあの日本史上未曾有の難局に立ち向かわれたのか……そんな感慨から今年、久しぶりに全編を鑑賞した。そう、「日本のいちばん長い日」を、である。言わずと知れた、昭和四十二年公開の、岡本喜八監督の手になる重厚長大な戦争史劇である。見終わると気力も体力も削ぎ取られたような感にとらわれる映画であるが、それでもわたしはこれで都合四回、全編通して見ている。それほど強烈な磁力を放つ作品だ。

 冒頭、連合国のポツダム宣言提示からの経緯が仲代達矢のナレーションで説明される。鈴木内閣による「黙殺」という反応、広島・長崎への原爆投下、ソ聯の対日参戦……このアバンタイトルは二十数分におよぶ。歴史の経緯を知っていても見ているこちらは、早く決断しないと日本が滅びてしまう! と気が気ではない。ついに宣言受諾と決まったものの、閣内で条件に関し意見の不一致が生じ、最終的に昭和天皇の御聖断を仰ぐこととなった。総理大臣鈴木貫太郎(笠智衆)の求めに陛下がお応えになる……

〈ナレーション〉
「不気味な静寂が流れた。やがて、天皇が静かに立ち上がられた。かくして、日本にはそのいちばん長い日がやってきた」


ここで劇伴が流れ、タイトルが表示される。そして昭和天皇(先代・松本幸四郎)が聖断を下す。長くなるが以下にその全台詞を紹介したい。

「反対の主旨はつぶさに良く聞いた。しかし、私の考えはこの前言ったとおりで、変わりはない。
 これ以上、戦争を続けることは無理である。陸海軍の将兵にとって、武装解除や保障占領は耐えられないであろう。國民が玉砕して、國に殉ぜんとする気持もよくわかる。
 しかし。しかし、私自身はいかようになろうとも、國民の……國民に、これ以上苦痛を舐めさせることは、私には忍びえない。
 できることは、なんでもする。私が直接國民に呼びかけるのが良ければ、マイクの前にも立つ。陸海軍将兵を納得させるのに陸軍大臣や海軍大臣が困難を感ずるのであれば、どこへでも出かけて、宥めて説き伏せる」


 はじめてこの作品を見たとき、この昭和天皇の台詞で滂沱たる涙がとめどなく流れ、自分自身驚いたものだった。もともとの陛下のお言葉から、脚本の橋本忍がたくみにエッセンスを抽出してまとめてある上に、松本幸四郎の声の演技がまた絶妙なのである。「國民の……」で一瞬声が詰まるところ、「できることは、なんでもする」で声を励ますところなどは、昭和天皇の心痛と、それを押して示した使命感の強さがありありと胸に迫って感じられる。

 日本は無くなってしまうのか。これからの日本はどうなるのか……あの日を知る人たちの、そのとき抱いた強烈な思いがこの映画には凝縮されて込められている。語りたいことは山ほどあるがそれはまたの機会に。なにしろ……疲れた……。


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